QYLDのSEC利回りは0.02%だった
前回は、企業の配当が原資の「配当系」ETFを調べた。今回はその対極、カバードコール型。利回りは10%を超えるものが並ぶ。でも分配金の中身は企業の配当じゃない。ここを取り違えると、高配当ETFの見え方が全部ずれる。仕組みから書く。
カバードコールって、何をしているのか
保有している株について、「将来、決めた価格より上がったら、その価格で売る」という権利(コールオプション)を他人に売る取引だ。売った側は、権利の代金(プレミアム)を先に受け取る。
イメージで言うと、駐車場経営に近い。土地(株)は持ったまま、月極で貸して小銭をもらい続ける。その代わり、もしその土地が将来すごく値上がりしても、約束した値段で手放すことになるかもしれない。家賃収入は安定する。でも「地価が跳ねたときの儲け」は最初から諦めている、という取引。
株は持ったまま、値上がりの天井を売って現金に変える。株価が横ばいでもプレミアム分だけ収入が入る。代わりに、大きく上がったときの利益は途中で頭打ちになる。下がるときはプレミアム分を除いてほぼそのまま下がる。守ってくれる仕組みでも何でもない。
この戦略をETFにしたのが、QYLDやXYLD(Global X)、JEPIやJEPQ(J.P. Morgan)。作りは2つの流派に分かれる。
Global X系:機械的に全部売る
QYLDは、ナスダック100の株を持ち、その指数のコールを毎月、保有のほぼ全量に対して売る。XYLDは同じことをS&P500でやる版だ。指数連動で、ルールは単純明快。経費率はどちらも年0.60%。
QYLDの数字を見ると、この仕組みの性格がよく出ている。
- 分配率は約12%(公式ファクトシートで2026年8月時点の過去12か月分配率12.26%)
- 一方、30日SEC利回りは0.02%(同)
- 価格は設定時(2013年12月)の25.54ドルから、2026年10月には18.09ドルまで下がった
- 年間の分配額も、1株あたり2021年の2.85ドルから2025年は2.04ドルへ減ってきている
SEC利回りというのは「配当や利息などの純粋な投資収益」で計算する指標で、オプションプレミアムはここに入らない。つまりQYLDの場合、公式の稼ぎベースの利回りはほぼゼロで、12%という分配の実態は、プレミアムと元本の払い戻しの組み合わせ、ということになる。
実際、Global Xが公表する分配原資の通知(19a-1)では、2026年9月支払い分のうち純投資収益は1.24%で、残りの約98.8%が元本払戻し(ROC)と推定されている。月によっては大半が元本の払い戻し。分配は出続ける。けれど基準価額は少しずつ削れていく。それが価格の長期推移(25.54ドル→18.09ドル)にも表れている。
XYLDは原資産がS&P500な分だけ穏やかで、価格は13年間で40.45ドル→41.30ドルとほぼ横ばい。利回りは過去12か月で約11%(第三者集計、2026年10月時点)だ。
J.P. Morgan系:作りが違う
JEPIとJEPQはアクティブ運用で、発想が違う。株は運用者が選んだ低ボラティリティ寄りのポートフォリオを持ち、オプションは「株式リンク債(ELN)」という仕組みを通じて、株価より少し上の価格のコールを売る。全量を機械的に売るわけじゃないから、上昇の一部は取り込める。経費率も年0.35%とGlobal X系より低めだ。
数字も性格が違う(いずれも公式ファクトシート、2026年9月30日時点)。
- JEPI:30日SEC利回り7.45%、過去12か月の分配利回り8.04%。SEC利回りがこれだけあるのは、ELNからの受け取りが投資収益として計上される構造のためで、QYLDの0.02%と単純には比べられない
- JEPQ:SEC利回り・過去12か月とも11.56%。ナスダック100中心だからJEPIより攻めの形
- ただ、設定来のトータルリターンは指数に劣る。JEPIは年率10.81%に対してS&P500は17.72%。JEPQは年率16.89%に対してナスダック100は22.03%
値動きの荒さ(ベータ)はJEPIで0.42と指数の半分以下。下げにくく、上げにくい。その代わりに毎月の分配が出る。交換条件のはっきりした商品だ。
| QYLD | XYLD | JEPI | JEPQ | |
|---|---|---|---|---|
| 運用会社 | Global X | Global X | J.P. Morgan | J.P. Morgan |
| 形 | 指数連動 | 指数連動 | アクティブ | アクティブ |
| 経費率 | 0.60% | 0.60% | 0.35% | 0.35% |
| 分配の目安 | 約12% | 約11% | 約8% | 約11.6% |
| SEC利回り | 0.02% | 未確認 | 7.45% | 11.56% |
※利回りは時点・定義がファンドごとに異なる(2026年8〜10月の公式資料・第三者集計)。分配は全て毎月。
日本から買う場合の注意
QYLD、XYLD、RYLD、JEPI、JEPQの5本について、SBI証券や楽天証券で買えるか、新NISAの成長投資枠の対象かどうかは、今回の調査では銘柄ごとに確認が取れなかった。証券会社ごとに取扱いや対象指定が違うので、買う前に各社の銘柄ページで確認してほしい。ここは断定しない。
税金の枠組みは配当系と同じで、分配金には米国で10%が源泉徴収され(NISAでも戻らない)、課税口座では日本で20.315%がかかる。米国で「元本払戻し」と分類される部分も、日本の課税の扱いがそのまま連動するわけじゃない、と理解されている。米国の通知書の内訳をそのまま日本の手取り計算に使うのは危ない。その点だけは押さえておきたい。
調べた末の、今の判断
毎月、給料みたいに分配が入ってくる形に気持ちが引かれるのは、よく分かる。私も配当を月ごとに記録している側だ。
ただ、カバードコール型の「利回り12%」は、企業が稼いで配る12%とは別物だ。受け取っている現金の一部は、自分の元本が姿を変えたものだったり、将来の値上がりを先に売った代金だったりする。それを分かったうえで「値上がり益を捨てて、毎月の現金と穏やかな値動きを買う」と決めて持つなら、一つの道具だと思う。逆に、利回りの数字だけを見て配当系と同じ棚に置くと、基準価額が目減りしていく理由が分からなくなる。
高配当という言葉は同じでも、原資が何かで中身はまるで違う。前回の配当系と合わせて、分配金を見るときは「これは何のお金か」から確認する癖を付けたい。
主な出典:Global X公式ファンドページ・分配原資通知(19a-1)、J.P. Morgan公式ファクトシート(JEPI/JEPQ、2026年9月30日時点)、SBI証券公式情報ほか(いずれも2026年10月24日に確認)。
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