金融所得の増税は、私の配当300万円にも来るのか
「金融所得に30%課税」という見出しが流れてきた。私の配当は年間300万円ほどある。これは取られる側なのか、先に計算しておく。
まず、いまのルール
株の配当や売却益にかかる税金は、いまは一律20.315%。給料みたいに稼ぐほど税率が上がる仕組みじゃない。100万円の配当でも、1億円の配当でも、割合は同じだ。
ここに「1億円の壁」という問題がある。給料の税率は年収が上がるほど重くなり、最高で55%までいく。一方、株の利益は20%ほどで止まる。だから所得が1億円を超えるあたりから、全体の負担率が逆に下がり始める。国税庁の数字だと、負担率は所得5,000万円から1億円の層で25.9%がピークで、100億円を超えると16.2%まで下がる。
この壁をならすために入ったのが「ミニマムタックス」という仕組みだ。
ミニマムタックスを、タクシーで考える
仕組みは「最低料金」に似ている。タクシーは、どんなに近道をしても初乗りの最低額が決まっている。あれの税金版だと思えばいい。
やり方はこうだ。まず普通に税金を計算する。次に「所得から一定の控除を引いた残りに、決まった税率をかけた額」を別に計算する。この別計算のほうが大きければ、差額を追加で払う。つまり、どれだけ節税の道を使っても、最低ラインだけは払う約束になっている。
何が決まったのか(2026年度の税制改正)
この最低ラインが、2027年分の所得から厳しくなる。決まったのはこの2つだ。
| 項目 | いま | 2027年分から |
|---|---|---|
| 特別控除(所得から引ける額) | 3億3,000万円 | 1億6,500万円 |
| 別計算の税率 | 22.5% | 30% |
| 対象になる所得の目安 | 合計30億円規模 | 合計6億円規模 |
対象は、もともと200〜300人と言われていた超富裕層から、2,000人ほどに広がる見込みだ。背景には、ガソリン税の暫定税率をやめる分の財源を埋める話もある。
ここで大事なのは、これは「全員の金融所得が30%になる」話ではないという点だ。あくまで、その年の所得が数億円規模の人に追加でかかる仕組みだ。NISAの非課税で得た利益は、この別計算の所得にも入らないとされている。
私のようなサラリーマン投資家への影響
私の場合で計算する。年収は1,200万円、配当は手取りで約300万円(税引前だと約417万円)。資産は1.7億円ほどある。
結論から言うと、今回の改正で私の税金は1円も増えない。対象は「1年間の所得」が6億円規模の人で、私の所得は給料と配当を足しても1,600万円ほどだ。控除の1億6,500万円にすら届かない。資産が1.7億円あっても、見られるのは資産の額ではなく、その年に生まれた所得のほうだ。ここを取り違えると、無駄に怯えることになる。
会社の社会保険料も、給料で決まるものなので、配当の税金がどうなっても基本的には動かない。
本当に気にすべきは、その先
ただし、楽観もしていない。今回の改正で、対象ラインは「30億円規模」から「6億円規模」まで一気に下がった。税の歴史は、新しい仕組みが超富裕層限定で始まって、少しずつ裾野を広げていく繰り返しだ。
もう1つ、時々出てくるのが「一律の税率を20%から25%へ」というタイプの議論だ。こちらはまだ決まった話ではない。ただ、もし本当になったら、影響は私にも届く。税引前の配当で計算するとこうなる。
| 税引前の配当 | いま(20.315%) | 25%になったら | 30%になったら |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 税金 約20万円 | 約25万円(+5万円) | 約30万円(+10万円) |
| 300万円 | 税金 約61万円 | 約75万円(+14万円) | 約90万円(+29万円) |
| 417万円(私の実額) | 税金 約85万円 | 約104万円(+20万円) | 約125万円(+40万円) |
| 500万円 | 税金 約102万円 | 約125万円(+23万円) | 約150万円(+48万円) |
私の実額だと、25%で年間約20万円の手取り減。月給で言えば、残業代がごっそり消えるくらいの額だ。無視はできない。
やることは、あまり変わらない
対策らしい対策は地味だ。NISAの枠は非課税で、この手の増税の外に置かれている。だから積立はまずNISAから埋める。確定拠出年金も同じだ。あとは、株を大きく売る予定がある年は、売却を複数年に分けるかどうかを先に考える。単年の所得が跳ねる形がいちばん損をするからだ。
増税の見出しは怖いが、数字に直すと「自分は対象か、対象ならいくらか」がはっきりする。今回の私の答えは、対象外、ただし将来の一律引き上げなら年間約20万円。備え方は、それで十分決められる。
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